「なんだか息がしづらい」は不安のサインかも? ― 過換気症候群と心療内科的アプローチ
「深く息を吸えない」「息がうまく入ってこない」――このような症状は、心因性の過換気症候群や不安障害の可能性があります。今回は、呼吸のしづらさが心とどう関係しているのか、心療内科での診断と治療について詳しく解説します。

「息苦しいのに、呼吸検査は異常なし」…それって心因性かも?
「呼吸が浅い気がする」「胸が詰まる感じがするけれど、病院では異常がないと言われた」――このような症状を抱えて心療内科を受診される方は少なくありません。とくに多いのが、過換気症候群や不安障害に伴う呼吸困難感です。
これらは身体の異常ではなく、心の状態が呼吸に影響している状態であり、見逃されやすい一方で、適切な治療によって改善が見込める症状です。
過換気症候群とは?
● 過換気とは「必要以上に呼吸しすぎる」状態
不安や緊張などをきっかけに呼吸が浅く速くなり、血中の二酸化炭素濃度が低下することで、さまざまな身体症状が出現します。
● よくある症状
- 息苦しさ、息が吸いづらい
- 手足のしびれ、めまい
- 胸の圧迫感、動悸
- 吐き気、冷や汗
これらの症状は突然出現し、パニック発作のような状態を引き起こすこともあります。
不安と呼吸は密接に関係している
呼吸は自律神経によってコントロールされており、不安状態になると交感神経が優位になって呼吸が浅く速くなります。この状態が続くことで「酸素が足りない気がする」「もっと息を吸いたい」と感じるようになり、過換気の悪循環に陥ってしまうのです。
また、「息苦しさ」という身体感覚そのものが新たな不安の引き金となり、**“呼吸の不安スパイラル”**が形成されるケースもあります。
呼吸器や循環器に異常がない場合は心療内科へ
息苦しさを訴える方の中には、内科・呼吸器科・循環器科などで精密検査を受けても「異常なし」と言われた方が多くいます。そうした場合に重要なのが、心因性の可能性に目を向けることです。
当院「新宿駅 内科・心療内科クリニック」では、以下のような流れで診療を行います:
● 初診時の評価
- 発症時の状況やきっかけの確認
- 息苦しさ以外の身体症状・心理的背景の聴取
- SDS(うつ病スクリーニング)、STAI(不安評価)などの心理検査
● 心療内科的治療
- 抗不安薬やSSRIなどの薬物療法(症状と重症度に応じて)
- 呼吸の再学習:腹式呼吸・リラクゼーション技法の指導
- 認知行動療法:呼吸に対する誤解や過敏性を修正するアプローチ
自分でできるセルフケア:呼吸をコントロールする技術
過換気や不安による呼吸困難には、自宅でもできる対処法があります:
● 1:4呼吸法(4秒吸って、8~16秒でゆっくり吐く)
吐くことを意識することで副交感神経が優位になり、呼吸が落ち着いてきます。
● 呼吸日記をつける
「どんな場面で息苦しくなるか」「そのときの考えは何だったか」を記録することで、パターンを自覚できるようになります。
● “吸うより吐く”を意識
過呼吸の状態では多くの人が「吸うこと」に意識が偏りがちです。実は**“吐く”ことが大切**です。息を吐けば自然と吸えます。
まとめ:「息苦しさ」も、心からのSOSかもしれない
息苦しさは、心のストレスや不安が体に表れたサインかもしれません。検査で異常がないからといって、自分を責める必要はありません。
心療内科では、症状の背景にある心の状態にも丁寧に目を向け、必要に応じた治療を提案することができます。
「呼吸がつらい」「でもどこに相談すればいいのかわからない」と感じている方は、ぜひ一度、専門機関にご相談ください。